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□ 会社設立に必要な基礎情報を決める

会社設立を決意したら、まずは以下の基礎情報を決めましょう。これらの情報のほとんどは会社設立に必要な定款(ていかん)にも記載が必要な重要事項です。

  • 会社形態
  • 商号(会社名)
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 資本金
  • 会社設立日
  • 会計年度
  • 役員や株主の構成

それぞれ詳しく解説します。

会社形態

現在新設できる会社形態は「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4種類です。

中でも株式会社は、以下のメリットがあり、国内でもっとも設立数の多い会社形態です。

株式会社の主なメリット

  • 出資の限度額に応じた責任の限定
  • 株主の議決権
  • 出資額に応じた配当権

しかし株式会社は、ほかの会社形態よりもランニングコストがかかります。費用を抑えて会社設立をしたい場合は、合同会社がおすすめです。

商号(会社名)

商号は会社の名称であり、会社を識別するためのものです。会社名を決める際には一定のルールを守らなければなりません。また、他社との区別がつき、かつ商標権を侵害しない名前にしましょう。

なお、設立後に会社名を変更することも可能です。その際は再度登記する必要があるので注意してください。

事業目的

事業目的とは、会社が行う事業の範囲を定めたものです。定款に書かれていない事業は原則として行えないため、将来的にやりたい事業を含めて記載しても問題ありません。

事業目的の数に制限はありません。ただし設立したばかりの会社があまりにも多く記載していると、何をしている会社か分かりにくく、社会的信用度に影響するおそれがあります。

設立したての頃は、事業目的を10項目以下に抑えておくことをおすすめします。

資本金

資本金とは、会社設立あるいは増資で出資者から払い込まれたお金を指します。創業当初は資本金が運転資金の基礎となります。現在の会社法では資本金の下限がないため、法律上は1円から会社設立が可能です。

しかし資本金が少額だと社会的信用度を落としたり、安定して事業を進めていきにくくなったりするデメリットがあります。初期費用と運転資金3ヶ月分位を足した金額は最低限、用意しておくのが望ましいです。

会社設立日

会社設立日は、法務局に会社設立の登記申請をした日です。事業開始日とは異なると覚えておきましょう。

特定の日にちを設立日としたい場合は、登記申請する日にあわせて逆算し、準備を進める必要があります。ただし年末年始や土日祝は法務局が開いていないため、会社設立日にはできません。

会計年度

会計年度とは、企業が会計上の業績を評価する期間のことで、通常は1年間です。会計年度は企業が自由に設定できますが、多くの企業が4月1日から翌年3月31日までの期間を会計年度としています。

また会計年度を定めるには、決算月の設定も必要です。会社の繁忙期と決算月が重なると業務が集中するため、決算月は繁忙期から避けるのが一般的です。

役員や株主の構成

株式会社を設立する際には、役員の人数や株主の構成を決めなければなりません。

株式会社には原則として最低1名以上の取締役と1名以上の監査役が必要です(*)。また株主には法人や個人などがあり、株式数に応じて議決権が異なります。

誰がどれだけ株を持っているのかは、会社を運営していく上で非常に重要です。株式会社の場合は、設立時に株主名簿を添付する必要があることも覚えておきましょう。

□ 会社用の印鑑(実印)を作成する

実印は市販の印鑑とは異なり、専門の業者に依頼して作成します。重要な書類に押印するため、実印の管理には十分注意しなければなりません。

また、実印は法務局で登録する必要があり、その際に印鑑届書が必要です。ただし2021年2月15日に法改正され、オンラインで設立登記を行う際は印鑑の届出が任意となりました。

□ 定款を作成する

定款(ていかん)とは、会社の目的や事業内容、役員の任期などを規定した書類です。会社設立には、定款の作成が必要です。

定款の記載内容は、会社法で一定の基準が設けられています。特に事業目的や商号などの「絶対的記載事項」は、必ず記載しなければならない事項です。記載されていない場合は、定款自体が無効となるので注意しましょう。


定款を作成・製本したら、3部作成します。理由としては、以下のように「原本・謄本・保存用」と使い分けるためです。

  • 原本:公証役場で保管
  • 謄本:法務局へ提出
  • 保存用:会社で保管

そしてプリンターで出力しページごとに並べたら、左端をホチキスで止めます。その後、各見開きページに発起人の実印を契印として押し、最後のページの発起人の欄に実印を押印すれば定款の完成です。

なお見開きページへの契印の代わりとして、ホチキス後に製本テープで束ね、表裏に発起人全員の実印を契印として押すことでも対応可能です。

□ 公証役場で定款の認証を受ける

株式会社を設立する場合は、作成した定款を公証役場に提出し、認証を受ける必要があります。

認証手続きは予約制で、本店所在地がある公証役場に連絡して、公証人と訪問の日時を決めて行います。認証手続きには、以下を用意しましょう。

定款の認証手続きに必要な書類 

  • 定款:3部
  • 発起人全員の3ヶ月以内に発行された印鑑登録証明書:各1通
  • 発起人全員の実印
  • 認証手数料:30,000〜50,000円(資本金額によって異なる)
  • 謄本代:250円×定款の枚数(現金)
  • 収入印紙:40,000円(電子定款でない場合)
  • 委任状(代理人が申請する場合)
  • 実質的支配者となるべき者の申告書

訪問前にFAXや郵送で定款を送付すると、認証手続きの前に内容を確認してくれるため、当日の手続きがスムーズになります。

定款の認証が必要なのは主に「株式会社」「一般社団法人」「一般財団法人」の3形態のみで、合同会社は認証手続きをする必要はありません。

上記の流れは定款を紙で作成した場合の手続きで、定款をオンラインで認証できる電子定款もあります。

電子定款には40,000円の収入印紙代がかからないのがメリットですが、電子定款の作成にはソフトウェアなどを購入する必要も出てきます。かえって電子認証のほうが高くついてしまうことがないよう、注意しておきましょう。

□ 資本金の払い込みを行う

定款の認証が完了したら次に資本金を払い込みます。一般的には銀行振込で支払うことが多く、銀行振込は別途、振込手数料がかかります。

また、この時点では法人口座を開設できないため、振込先は発起人の個人口座にしましょう。発起人とは、会社設立に際し、出資した人です。

支払いが完了したら、資本金を証明する書類として、「通帳の表紙と1ページ目」「資本金の振込内容が記載されているページ」の3枚をコピーしましょう。資本金を証明する書類は後日、登記申請の際に必要なため、大切に保管しておいてください。

□ 登記申請書類を用意し登記申請する

ステップ⑤までの準備ができたら、会社設立に必要な書類を用意し、法務局で登記申請します。登記申請に必要な書類は以下の10種類です。

登記申請に必要な書類

  1. 登記申請書
  2. 登録免許税分の収入印紙を貼り付けた納付用台紙
  3. 定款
  4. 発起人の決定書
  5. 設立時取締役の就任承諾書
  6. 設立時代表取締役の就任承諾書
  7. 設立時取締役の印鑑登録証明書
  8. 資本金の払込があったことを証する書面
  9. 印鑑届出書
  10. 「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R

印鑑届書には、法人印と個人印の押印が必要です。そのため登記申請に必要な書類を準備する前に、会社の印鑑を作成しておきましょう。

登記申請は、不備がなければ10日ほどで登記完了です。不備があった場合のみ申請した役所から連絡が届き、登記完了の場合連絡はありません。

□会社設立に必要な費用

会社設立時に必要な費用は、法務局での登記費用・公証役場での定款認証費用・印刷物・書類の作成費用などです。

また専門家に依頼する場合は、弁護士や税理士の報酬が追加でかかるケースもあります。これらの費用は、会社設立に必要な資金計画を立てる際に忘れずに考慮しておきましょう。

■株式会社と合同会社にかかる法定費用の比較

項目株式会社合同会社
定款用収入印紙代40,000円
(電子定款では不要)
40,000円
(電子定款では不要)
定款の謄本手数料約2,000円
(250円/1ページ)
0円
定款の認証料
(公証人に支払う手数料)
・資本金100万円未満:30,000円
・資本金100万円以上300万円未満:40,000円
・資本金300万円以上:50,000円
0円
登録免許税150,000円
または
資本金額×0.7%
どちらか高いほう
60,000円
または
資本金額×0.7%
どちらか高いほう
合計約222,000円〜約100,000円〜

□会社を設立した後に必要な手続き

会社を設立した後も、以下のさまざまな機関での手続きが必要です。

会社設立後に手続きが必要な機関

  • 税務署
  • 都道府県税事務所
  • 年金事務所
  • 労働基準監督署
  • ハローワーク
  • 各行政機関

必要な手続きを、対応機関ごとに解説します。

法人住民税・法人事業税に関する手続きと必要書類

税務署では、法人税・消費税・源泉所得税に関連する届出等の手続きを行います。会社の本店所在地がある地域の管轄税務署で行う必要があるため、どこの税務署が管轄であるか事前に国税庁のサイトから確認しましょう。

また提出する書類は青色申告を行うか、従業員を雇用しているかなどで異なります。

書類提出が必要なケース
法人設立届出書会社設立時には必ず提出する
青色申告の承認申請書青色申告をする、かつ適用条件に該当する場合
給与支払事務所等の開設届出書会社が従業員を雇用し、給与を支払う場合
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書特例を適用する場合

各都道府県税事務所・市町村役場で行う手続きと必要書類

都道府県税事務所や市町村役場では、法人住民税や法人事業税、固定資産税などの手続きが必要です。これらの手続きでは、設立届出書や法人登記簿謄本などの書類が求められます。

また手続きは、本店所在地がある都道府県税事務所と市町村役場で行います。各自治体によって異なるため、必要な提出書類や申請方法などは、管轄の自治体ホームページを確認しましょう。

年金事務所で行う手続きと必要書類

年金事務所では、社会保険の加入手続きが必要です。社会保険とは、健康保険や厚生年金など公的保険の総称で、会社設立時には以下の保険に加入しなければいけません。

会社設立時に加入が必要な保険

  • 健康保険(介護保険含む)
  • 厚生年金保険
  • 労災保険
  • 雇用保険

会社を設立したら、法律により(健康保険法第3条、厚生年金保険法第9条など)社会保険への加入が義務づけられています。役員や従業員の人数には関係なく、一人社長の場合でも一定以上の報酬(給与)があれば加入しなければなりません。

健康保険と厚生年金の加入手続きは、会社設立から原則として5日以内に、会社所在地を所轄する年金事務所に届け出ます。

ただし、届け出に必要な登記簿謄本が設立日から5日以内に入手できない場合が多く、実務上は5日を過ぎてしまうことが一般的です。

労働基準監督署で行う手続きと必要書類

株式会社を設立した場合、労働基準監督署には労働法や社会保険に関する事項の報告が必要です。

具体的には、社会保険の加入状況や労働条件、給与の支払いに関する規程を届け出ます。必要書類としては、社会保険に関する資料や労働条件に関する規程などが挙げられます。

また従業員を雇った場合には、労災保険にも加入もしなければいけません。本店所在地の管轄である労働基準監督署で手続きを行うので、事前に必要な書類などをホームページで確認しておきましょう。

ハローワークで行う手続きと必要書類

労働基準監督署の手続きが完了したら、管轄のハローワークにて雇用保険の手続きが必要です。

管轄のハローワークをお調べになりたい方は、以下をご覧ください。
出典:厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」

許認可が必要な業種とその手続き

一部の業種では、行政機関の許認可が必要です。たとえば以下の業種は、許認可がないと事業を行えません。

許認可が必要な事業の例

  • 医療機関
  • ペットショップ
  • リサイクルショップ
  • 不動産
  • 保育所
  • 美容所・理容所
  • ガソリンスタンド
  • 警備
  • 乳製品製造
  • 古物商

具体的な内容は、担当の行政機関へ確認が必要です。許認可を受けずに事業を行うと罰則が課される恐れがあるので、十分に注意しましょう。

□会社設立で利用できる助成金・補助金

会社設立時にはさまざまな費用がかかりますが、会社設立で利用できる助成金や補助金があります。以下は、そのうちの一例です。

会社設立で利用できる助成金・補助金の例

  • 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
  • 小規模事業者持続化補助金

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は、創業や販路開拓などへ取り組む中小企業者を助成しています。

資金は中小機構と都道府県、金融機関が拠出し、造成されたファンド(基金)の運用益から助成される事業です。

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)には、以下の2種類が存在します。

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)の種類

  • 地域中小企業応援ファンド
  • 農商工連携型地域中小企業応援ファンド

地域中小企業応援ファンドでは、各地の農林水産物や伝統技術を活用した商品開発・販路開拓などが支援対象です。

■地域中小企業応援ファンドの助成内容

助成対象の費用主に研究・商品開発、需要の開拓にかかる費用
主な助成対象者中小企業者・創業者、中小企業者・創業者の支援機関、その他NPO法人など

農商工連携型地域中小企業応援ファンドでは、中小企業者と農林漁業者の有機的な連携による商品開発・販路開拓などを支援します。

■農商工連携型地域中小企業応援ファンドの助成内容

助成対象の費用主に研究・商品開発、需要の開拓にかかる費用
主な助成対象者中小企業者と農林漁業者の連携体、中小企業者と農林漁業者の連携体支援機関、NPO法人と農林漁業者の連携体など

中小企業者のみ、農林漁業者のみの連携体は助成対象に認められないため、注意が必要です。

なお、いずれの助成金も返済は原則不要です。複数年にわたって資金助成するファンドもあり、長期的な取り組みにも役立ちます。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や生産性向上を支援する制度です。販路開拓や生産性向上にかかる費用の一部が補助されます。

事業者自身が経営を見直し、持続的な経営に向けた計画を立てていないと、補助金を受け取れない場合もあるため注意しましょう。

補助対象者は、以下の要件をすべて満たす、国内の法人や個人事業者、特定非営利活動法人です。

補助対象者

  1. 業種ごとに定められた従業員数が一定以下
  2. 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式保有されていない(法人のみ)
  3. 確定した(申告済み)直近過去3年分の「各年」または「各事業年度」の課税所得が年平均額で15億円を超えない
  4. 小規模事業者持続化補助金<一般型>の「卒業枠」で採択を受け、補助事業を実施した事業者ではない
  5. 下記3つの事業で採択を受け、補助事業を実施した場合、各事業の交付規程で定める様式 第 14「小規模事業者持続化補助金に係る事業効果及び賃金引上げ等状況報告書」を原則本補助金の申請までに受領された者である(先行する受付締切回で採択された共同申請の参画事業者を含む)

    ・小規模事業者持続化補助金<一般型>
    ・小規模事業者持続化補助金<コロナ特別対応型>
    ・小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>

補助内容は5つの類型に分かれており、いずれかひとつの枠で申請できます。

類型補助率補助上限申請要件
通常枠3分の250万円経営計画に基づき、支援を受けながら販路開拓などに取り組む
賃金引上げ枠3分の2
(赤字事業者は4分の3)
200万円販路開拓に加え、賃金を地域別最低賃金より30円以上増加
卒業枠3分の2200万円販路開拓に加え、従業員の数を一定数以上に拡大
後継者支援枠3分の2200万円販路開拓に加え、アトツギ甲子園のファイナリストまたは準ファイナリストの事業者
創業枠3分の2200万円特定創業支援等事業の支援を公募締切時から起算して過去3年の間に受け、過去3年の間に開業

また、いずれの類枠もインボイス特例の要件を満たすと、補助上限を50万円上乗せ可能です。

インボイス特例の要件

  • 2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間中、一度でも免税事業者だった
  • 2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間中、免税事業者であることが見込まれる事業者
  • 2023年10月1日以降に創業し、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者

会社設立時の負担を軽減できるため、要件を満たせるなら活用を検討しましょう。

□会社設立をするメリット

会社を設立する代表的なメリットは主に以下の通りです。

会社設立するメリット

  • 個人事業主よりも社会的な信用を得られる
  • 法人として銀行口座やクレジットカードが作れる
  • 資金調達を行いやすくなる
  • 法人にすることで節税効果が得られる
  • 決算月日を自由に設定できる
  • 経費として認められる項目が増える
  • 社会保険に加入できる

それぞれ、詳しく解説します。

個人事業主よりも社会的な信用を得られる

会社を設立することで、個人事業主に比べてより多くの社会的な信用を得られます。会社が法人格をもつことで、信頼性や安定性が高いとみなされるためです。

また、別の会社と取引する際にも有利になるとされており、特に大手企業は法人以外とは取引しない場合もあります。さらに、優秀な人材を確保しやすくなる点もメリットです。

法人として銀行口座やクレジットカードが作れる

法人の銀行口座やクレジットカードは、個人のものと比較して、利用限度額が高く設定されたり、利息の優遇措置があったりします。

また法人口座を作れば、取引先からの支払いや従業員への給与支払いなど会社の資金管理が容易になるため、経理処理も効率的に行えるでしょう。法人口座を開設する審査は厳しいため、社会的信用度が高い点も、融資を受ける際に有利に働きます。

資金調達を行いやすくなる

会社を設立することで、投資家や銀行などから融資を受けやすくなります。設立した会社は、個人事業主やフリーランスとは異なり、個人の資産として扱わず、法人の資産を持ちます。

そのため会社自体が保有する資産や収益が明確になり、金融機関も融資判断をしやすく資金調達が行いやすいです。

法人にすることで節税効果が得られる

会社として法人化すれば、所得税や法人税、消費税などに関する節税効果が得られる可能性があります。また法人税には、個人の所得税よりも低い税率が適用される場合があり、税負担の軽減が可能です。

さらに役員報酬を設定すれば、給与所得控除も受けられます。これは、個人事業主にはない法人形態だからこそ得られる所得税法上のメリットです。

決算月日を自由に設定できる

会社には、法定の決算期限があり、期間内ならば決算日の設定は自由です。これにより、自社の業務や取引状況に合わせた柔軟な決算処理ができ、会計処理をスムーズに進められます。

個人事業主は事業年度が1月から12月までと決まっているので、自由に決算月日を決められるのは大きなメリットです。

経費として認められる項目が増える

法人として会社設立を行うことで、経費として認められる項目が増えます。具体的には、以下の項目が経費に認められます。

会社設立すると経費計上できる項目の例

  • 経営者自身の収入(役員報酬や出張時の日当、退職金など)
  • 契約者が法人の生命保険料
  • 住宅費(社宅制度の導入)

個人事業主は、従業員へ支払う給与・賞与を経費計上できますが、自身の給与は存在しません。売上から経費を差し引き、確定申告で税金を納めた残りが事業主自身の収入です。

会社を設立し、事業主自身が法人の代表になっているなら、役員報酬で自分が受け取る給与や退職金を経費計上できます。ただし所定の要件を満たす必要があり、いつでも・好きなだけ役員報酬を受け取れるわけではありません。

出張時の日当も会社規程で定めた内容であれば、役員を務める経営者自身が受け取る分も 経費にできます。

また、法人が契約する生命保険料は経費計上に上限がなく、保険の種類や内容次第で全額経費計上も可能です。個人事業主も生命保険料は控除できますが、控除額には上限があります。

経費に認められる項目が増えれば、所得税や法人税の節税にも有効です。

社会保険に加入できる

会社設立を行うと、法人として社会保険への加入が可能です。従業員のために健康保険や厚生年金、労災保険などへ加入でき、社員の福利厚生に貢献もできます。

保険等の福利厚生を整えれば、従業員の雇用が安定し、より高度な人材確保にもつながるでしょう。

□会社設立をするデメリット

会社設立をする場合のデメリットは、主に以下の通りです。

会社設立する主なデメリット

  • 会社設立に費用や手続きが必要
  • 事務作業の負担が増える
  • 赤字でも法人住民税の納税が必要

それぞれ詳しく解説します。

会社設立に費用や手続きが必要

会社設立には、認証手数料や定款に貼る収入印紙、登記時の登録免許税などの法定費用がかかり、手続きの手間もあります。株式会社と合同会社とでは法定費用が異なり、以下の金額が必要です。

株式会社設立の法定費

  • 株式会社の場合 約222,000円以上
  • 合同会社の場合 約100,000円以上

また上記に加え、会社の実印を作成する費用や、印鑑証明などにも費用がかかります。

各種手続きも行う必要があり、会社設立の前後には多くの手間がかかる点がデメリットです。

事務作業の負担が増える

会社を設立すると、個人事業主よりも会計・税務に関する作業が増え、事務作業の負担も増加します。

会計処理は複式簿記に沿って厳密に行わなくてはならず、法人税などの申告業務も必要です。法人税の申告はとても複雑であるため、税理士への委託がほぼ必須になるでしょう。

赤字でも法人住民税の納税が必要

法人住民税の均等割は、決算が赤字でも納税しなければなりません。個人事業主なら決算が赤字で個人の所得が一定以下であれば、住民税は非課税です。

法人住民税は、均等割と法人税割で構成されます。法人住民税の均等割は、資本金や従業員数に応じて課税され、赤字でも納税が必要です。

会社設立の注意点

会社設立時の注意点は、以下の2点です。

会社設立の主な注意点

  • 会社と個人のお金を区別して管理が必要
  • 会社解散時にもコストがかかる

それぞれ詳しく解説します。

会社と個人のお金を区別して管理が必要

会社を設立した場合、会社のお金と個人のお金は、明確に区別しなければなりません。

個人事業主の場合、事業で得た利益の使いみちは、基本的に事業主の自由です。一方、会社を設立した場合、個人的な目的で会社のお金を使うなら、会社からお金を借りる形式を取ります。法人代表であっても、私的な理由で勝手に会社のお金を使えません。

会社から借りている旨を明確にするため、金銭消費貸借契約書を交わし、会社へ利息の支払いも必要です。

なお社宅制度を採用し、住宅費を経費として計上した場合は、会社の資産を借りているものとして賃料を支払わなければなりません。

会社解散時にもコストがかかる

会社を解散する際も解散に伴う手続きがあり、登記費用や公告費用が必要です。

解散時には、解散・清算人選任登記や清算結了登記を行い、それぞれ以下の登録免許税がかかります。

登記内容登録免許税
解散・清算人選任登記解散の登記 30,000円
清算人選任登記 9,000円
清算結了登記清算完了登記 2,000円

また会社の解散時には、官報へ解散公告の掲載も必要です。一般的な会社なら掲載料金は1行(22字)税込3,589円(2023年9月時点)で、解散公告なら約4万円かかります。

□まとめ

会社設立の手続きは、会社形態や業態で異なります。また株式会社と合同会社では、設立時の費用が10万円ほど異なり、費用面でも違いがあります。

ほかにも会社設立には初期費用や手続きの手間、赤字でも負担しなくてはいけない税金などありますが、法人ならではのメリットも多いです。

より大きな取引先と契約を取る、節税効果でお金を守るなど明確な理由があるなら、ぜひ会社設立に本記事を役立てて下さい。

会社設立の際は、基礎情報や必要書類の準備、各種申請があるため、計画的に進めましょう。